電子マネー対応自動販売機の普及について

はじめに

電子マネー決済が出来る自動販売機が世に出て数年経ちましたが、実際に電子マネー決済に対応している自動販売機の数はまだまだ少ないのが現状です。

もちろん、駅中、駅前、市街地などでは、多くの電子マネー対応自動販売機を見かけることもありますが、全自動販売機に占める電子マネー対応自動販売機は、5%程度とも言われています。
そして、その大半が東京、大阪、名古屋などの都心とされています。

そもそも、日本においては、自動販売機に限らず、クレジットカード等でお金を払うキャッシュレス決済比率は、世界と比べて買う段に低く、日本政府は10年間で40%に引き上げる目標を掲げています。
2020年オリンピックをきっかけに増加する訪日外国人への消費促進や国内消費の喚起になる取り組みをとっているところでもあります。

自動販売機の電子マネー対応は、果たしてこれをきっかけに飛躍するのでしょうか。

電子マネー対応自動販売機が普及しない理由(デメリット)

電子マネー対応自動販売機がこれまで中々普及していない理由は、何といってもコストです。

イニシャルコスト

まず、導入時に発生するイニシャルコスト。
通常の自動販売機の価格に加え、カードリーダーなどの電子マネー決済を行うための仕組みを搭載する必要があります。
自動販売機設置会社にとって、これが追加的コストとして重くのしかかります。

電子マネー対応自動販売機: 導入費用が高い … 通常の自動販売機価格+カードリーダー等専用機器
現金払いのみの自動販売機: 導入費用が安い

もちろん、そのコストを負担してもなお売上が出るロケーションであれば、電子マネー対応自動販売機は難なく導入することが出来ます。
無理に設置会社に電子マネー対応自動販売機を設置させると、販売手数料等の設置条件が悪化する懸念もあるので注意が必要です。

ランニングコスト

そして、ランニングコスト。
電子マネー決済は便利ですが、この仕組を提供している電子マネー決済会社が存在します。
現金で購入する場合は、自動販売機業者と消費者が直接、現金と品物を取引するわけですが、電子マネー決済の場合は、業作と消費者の間に電子マネー決済会社が介在します。
つまり、手数料が発生するのです。
消費者はこの手数料を負担しないため、あまり意識しませんが、自動販売機設置会社にとっては、この手数料が負担になります。

ちなみに、電子マネー決済の手数料は一般に3%程度と言われており、この手数料を誰が負担するのかという問題が出てきます。
当然、販売手数料を受け取っている設置者にも影響が出てしまうわけです。
特に、自動販売機を収益目的で設置している場合、現金払いの自動販売機の際に受け取れる販売手数料から決済手数料を差し引かれた条件を提示されることが多々ありますので注意が必要です。

電子マネー対応自動販売機: 現金払いに比べ2~3%の決済手数料が発生する。自動販売機から発生する販売手数料が減る。
現金払いのみの自動販売機: 決済手数料なし

電子マネー対応自動販売機のメリット

コスト負担が大きいとされる電子マネー対応自動販売機ですが、メリットもあります。

何といっても現金が不要であることが最大のメリットです。
電子マネー決済が可能だからこその購入者も出てくることでしょう。

泥棒対策になる

一時期、ニュース等で話題にもなった自動販売機のピッキング被害。
自動販売機の取引で、現金が完全になくなれば、自動販売機荒らしにあることはなくなるでしょう。
100%電子マネー決済とはいかずとも、現金の取り扱いが減ればその分だけ自動販売機荒らしのリスクは減ります。

現金管理ミス対策になる

現金払いの自動販売機は、自動販売機設置会社のルートマンによって現金管理が行われています。
計算ミスや現金の紛失、盗難対策にも電子マネー決済は役立ちます。

機会損失防止

ジュースを買いたいのに、たまたま小銭がないといった場合、もし電子マネー対応自動販売機であれば、小銭がなくともジュースを買うことが出来ます。
これは、自動販売機設置者からすれば、機会損失を防止することが出来るということです。

新たな顧客獲得に

電子マネー決済で飲料を購入することができれば、小銭を持ち歩く必要がなくなります。
例えば、ランニングを趣味としている方も電子マネーを持ち歩けば、小銭による煩わしさが解消され、気軽に水分補給できるようになります。

訪日外国人対策

日本の観光立国施策の成果が出ており、今では日本中の至るところで外国人観光客を見かけるようになりました。
例えば、電子マネー決済大国の中国では、皆が皆、アリペイやwechatpay等の電子マネー決済で買い物を済ませています。
電子マネー対応自動販売機を設置することで、現金決済に慣れていない訪日外国人にもジュースを販売することが可能になります。

まとめ


電子マネー対応自動販売機は、通常の自動販売機と比較して、イニシャルコスト、ランニングコストともにかかってしまいます。
このため、自動販売機を無料で設置してくれる自動販売機設置会社からすれば、売れる場所でないと高額な自動販売機を購入し、設置することが難しい状況です。
また、設置者に提示する条件も、現金払いの自動販売機に比べると、悪化してしまうため、設置者にも中々受け入れてもらい難いです。

一方で、電子マネー対応自動販売機ならではのメリットもあり、管理コストの削減やリスク低減、売上機械の増大といったメリットもあります。

今後、日本におけるキャッシュレス決済化が進めば、導入コストが下がり、ひいては販売手数料条件への悪影響も無くなっていくことでしょう。
そうなれば、電子マネー対応自動販売機の普及が進み、売上機会が増えるといった良いサイクルが生まれることも十分考えられます。