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カップ式自動販売機とは
そもそもカップ式自動販売機とは、購入の都度、飲料をカップに注ぎ提供をする形式の自動販売機のことです。
高速道路のサービスエリアや学校、企業、デパートやショッピングモール等の商業施設で見かける写真のような自動販売機ですね。
缶やペットボトルの自動販売機とは異なり、道路沿いやお店の前で見かけることは基本的になく、屋内に設置されていることが多いと思います。
そして、このカップ式自動販売機を設置するには、食品衛生法に基づく「喫茶店営業許可」が必要とされています。
カップ式自動販売機を見かけた際に、自動販売機のどこかに「喫茶店営業許可証」が貼ってあるはずなので、探してみると面白いかもしれませんね。
喫茶店の営業許可とは
食品衛生法第52条第1条に基づく営業許可のひとつです。
さっそく、食品衛生法第52条第1条の条文を見てみましょう。
と書きたいところなのですが、法律の読み方に不慣れな方は少々分かりづらいので、法令の条文は該当箇所を下部に転載し、解説に入ります。
食品衛生法では、飲食店などの公衆衛生に影響が大きい業種のうち、指定したものについては、都道府県知事の許可を得る必要があるとされています。
その指定された業種(34業種あります)のひとつに喫茶店営業があり、喫茶店を営業する場合は、都道府県知事に許可をしてもらわなくてはいけません。
そして、喫茶店営業の定義や対象について調べると、許可権限をもつ都道府県のホームページ等から喫茶店営業については、かき氷を販売する営業やジュース等のコップ式自動販売機等も含まることが示されています。
ということで、カップ式自動販売機は喫茶店であり、喫茶店を営業するには、都道府県知事の許可が必要であるというルールがあることが理解出来るかと思います。
ちなみに、中核市等の場合は、都道府県知事から中核市等の長に権限が移譲されているケースもあるため設置する自治体ごとに確認が必要です。
■食品衛生法
第51条 都道府県は、飲食店営業その他公衆衛生に与える影響が著しい営業(食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律第二条第五号に規定する食鳥処理の事業を除く。)であつて、政令で定めるものの施設につき、条例で、業種別に、公衆衛生の見地から必要な基準を定めなければならない。
第52条 前条に規定する営業を営もうとする者は、厚生労働省令の定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。
■食品衛生法施行令
第35条 法第五十一条の規定により都道府県が施設についての基準を定めるべき営業は、次のとおりとする。
一 飲食店営業(一般食堂、料理店、すし屋、そば屋、旅館、仕出し屋、弁当屋、レストラン、カフエー、バー、キヤバレーその他食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業をいい、次号に該当する営業を除く。)
二 喫茶店営業(喫茶店、サロンその他設備を設けて酒類以外の飲物又は茶菓を客に飲食させる営業をいう。)
三 菓子製造業(パン製造業を含む。)
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三十四 添加物製造業(法第十一条第一項の規定により規格が定められた添加物を製造する営業をいう。)
■喫茶店営業の定義や対象
喫茶店、サロンその他設備を設けて酒類以外の飲物又は茶菓を客に飲食させる営業。その他、かき氷を販売する営業、ジュース等のコップ式自動販売機等も対象。
※島根県HPより
いわゆる喫茶店の他、かき氷を販売する営業やジュース等のコップ式自動販売機等も含まれます。
※千葉市HPより
カップ式自動販売機は、なぜ屋外に設置できないの?
都道府県知事等が、喫茶店営業の許可をする際に基準としていることのひとつとして、喫茶店は屋内営業を原則としているためです。
喫茶店は屋内である…すなわち、喫茶店の一種であるカップ式自動販売機は、屋内に設置されることを前提に許可が出ることになっているのです。
このことは、一般社団法人日本自動販売システム機械工業会のホームページにも記載されていますね。
Q: カップ式自販機が屋外にないのはなぜですか?
A: カップ式自販機の設置に際しては、食品衛生法に基づく喫茶店営業の許可が必要となります。許可要件の一つとして、原則として屋内に設置されていることが規定されています。
ところで、屋外客席のある喫茶店もあるのに許可を得ていないの?という疑問もありますが、おそらく許可を得ていることでしょう。
あくまで、原則が屋内ということですし、各都道府県等が発生している情報を見ても、屋外客席の設置に基準を持っているようです。
なお、カップ式自動販売機のどこが「喫茶店」なんだ!と感じる方もあることでしょうが、法律上は自動販売機の中で水とシロップ等を混ぜる行為が調理に該当するという解釈のようです。
実態としては、人の手に触れることなく、自動販売機の機械の中で行われていることなのですが…。
喫茶店営業許可の制度が変更になる必要がある?
2018年7月以降、厚生労働省が有識者や業界関係者を招き「食品の営業規制に関する検討会」を開き、食品の営業許可制度について見直しを検討しており、カップ式自動販売機についても業界関係者が参加し、見直し候補となっています。
食品の営業規制に関する検討会の趣旨は、2018年6月に食品衛生法等が改正されたことを契機に、営業許可を要する業種について届出制への見直しも検討されることになっています。
日本自動販売協会が検討会に提出した資料によると、そもそもカップ式自動販売機が喫茶店営業許可業種になった背景として、次の2点によるそうです。
・昭和47年当時、カップ式自販機普及台数が少なく、自動販売機営業許可を制定する規模でなかった。
・カップ式自動販売機は、調理行為があることから施設基準が軽装備な喫茶店営業となった。
これらについては、昭和47年当時17,312台であったカップ式自動販売機が、平成29年には156,400台の規模に普及し、喫茶店の営業件数(約28,000件)を凌駕しており、実情に即していないといえます。
また、
・カップ式自動販売機の構造機能の規定が無く、カップ式自動販売機は、「公衆衛生に与える影響が著しい営業」と規定された。
経緯については、昭和55年1月に、厚生省(当時)が食品自販機の構造機能に関する指導事項の通達を出し、以降は指導事項を順守した自動販売機が設置され、「公衆衛生に与える影響が著しい営業」は著しく低下しました。
事実、カップ式自動販売機は過去に食中毒の事例が報告されていません。
こうした背景から、近い将来、カップ式自動販売機は許可制ではなく、届出制に変更される可能性があります。
カップ式自動販売機の他にも、許可等が必要な自動販売機がある
カップ式自動販売機は、食品衛生法による喫茶店営業許可が必要であることは、これまで記載したとおりです。
このほか、法律に基づき行政庁の許可等を得ないと設置出来ない自動販売機があり、以下のようなものが代表的です。
ただ、いずれも清涼飲料水を販売する自動販売機に比べると、普及台数が圧倒的に少なく、利益もあげづらいものが中心のため、参考程度としていただければと思います。
特に(5)のたばこ自動販売機、(6)のお酒自動販売機については、行政、業界ともに撤廃の方針で動いしているため、基本的に新規設置は難しいものと考えると良いでしょう。
(1)飲食店営業許可が必要となるもの
ハンバーガー、電子レンジ付冷凍食品、給湯装置付カップめん、弁当などを販売する自動販売機
(2)乳類販売業営業許可が必要となるもの
牛乳を販売する自動販売機
(3)氷雪製造業営業許可が必要となるもの
氷やかき氷を販売する自動販売機
(4)食肉販売業の許可が必要となるもの
冷凍包装食肉を販売する自動販売機
(5)製造たばこの小売販売業に関する手続き
たばこを販売する自動販売機
(6)一般酒類小売業免許が必要となるもの
酒を販売する自動販売機
ちなみに、自動販売機として最も普及している缶・ペットボトルの自動販売機については、食品衛生法上の営業許可は不要です。
これは、缶・ボトル入り飲料が製造・販売段階で食品衛生法に規定する基準をクリアしていることによるためです。